[PR]今日のニュースは
「Infoseek モバイル」


連載小説

蕎麦屋の物語です。

「蕎麦ロボット28号」  

作:夢八 

第一回 一周年パーテイその1

今日の秋空のように、心の中が、澄み切っていた。何もかも順調で、それは、少し怖いくらいでもあった。
 売り上げも右肩上がり、、お客も付いてきている。

店の中も明るいし、家族も幸せそうにしている、多分そうだろう。確信に近いものが、高橋 良には、あった。
「良さん、すごいよ、今日のパーテイに道越さん、近石も来るよ。気をもませるよ,全く。今になってメール入った。」
近藤が、打ち合わせ用のペーパーを、持って、良の、テーブルの向かいに 座る。
「あの二人がくれば、また方々に、書いてくれますね」
「蕎麦業界や、マスコミへの影響、大きいからね、これで、またネタづくり、できるし、
この店,樹海もいよいよ、蕎麦屋名店の仲間入りだよ」と、近藤。
「でも、名店までは、どうなんですか?」
「自信持ってよ、これまでの、名店とも、明らかに違うんだから。仕掛けや考え方に差があるんだから。僕を信じてよ。」
近藤は、深々と、良を見た。自信家である。良もまた、その近藤に半ば寄りかかっていた。
特に最近はそうだ。
良と、近藤の出会いは3年前に遡る。
父親が蕎麦屋を、営んでいて、良もまた2代目として当然のごとくあと継ぐべく、父に代わるべく共に働いていたのである。
それは、単に働いていたというに過ぎず、儲からないし、町の蕎麦屋の域をでないものだった。客もまた惰性のように来ては、
帰って行くものだった。
蕎麦が旨いのか、まずいのか、反応がない。丼ものの量が多いから来るのか、安いからくるのか解らなかったし、
また、良も当時は興味もなかった。
それが、父親の引退から、良の人生が一変していく。正確に言うと、近藤との出会いから衝撃的に変って行ったのだ。
3年前、既に良は、45歳。高校3年の娘、純、妻、華恵の家族があり、先細りの店で転職もままならず、これから先のことは、
宙空に浮いたように、見えてはいなかった。
見かねた親戚の知り合いが面白い人がいると、良に紹介した。
その知り合いを介して近藤が、訪れた。美人秘書もいた。近藤は、名店案内とか、蕎麦物語とかおよそ良が見たことはあったが、
詳しくは読んだこともない本を4,5冊見せながらこう言った。
「3年後、あなたの店が、ここに入ります。入ってみますか?・・・儲かりますよ」

「・・・手打ちの店ですよね、ここにあるのは」良は、手打ちなどしたこともなく、問屋から送られて来る、蕎麦玉、うどん玉しか
湯でたことがなかった。ここ10年の手打ちブームとは無縁だったし、父親の言うとおりにやってきていた。
「僕が、全部お膳立てします。少し修行してもらいます。資金も要ります。ただこのくらいの敷地があれば、大丈夫だと思いますよ。」近藤が優しい目になっていた。
「年齢は気にしないでください、料理などもコンサルつけます、僕にアイデアがいっぱいあるんです。」良の不安を打ち消すように
近藤が畳み込んだ。
不思議な目をしていた。まだ、良が一度も見たこともない目だった。良は吸い込まれた。
良は、変われるかもしれないと、その時感じていた。


なお、この小説は、作者の想像上のもので、事実に基づくものでは、ありません

 

COPYRIGHT 2004 YUMAHCHI ALL RIGHTS RESERVED