
2005年7月に、サンケイブックスから始まった「雷電」の五度目(著者による)の改訂版が文春文庫で出ました。渡辺さんの旧著をまた読むことの出来る幸せを感じられるのは、このところずっと二人三脚の文春編集者小林さんのご努力の賜物ですね。雷電は旧海軍機で最も好きな機体だけに何度読んでも飽きません。まだ読了していませんが、今回印象深かったのは、十四試局戦J2M1には、ペラの振動が無く無理がなかったという指摘です。まだ1450馬力の火星13型とVDMペラの相性が良かったようです。1720馬力の火星23型のコンロッドの運動とペラが「うなり」を起こしてしまったのは、当時の日本では運が悪かったとしか言いようがないですよね。アメリカだって、タコマ橋だったか、吊り橋が共振で落ちてしまった事がありますもの。エンジンの後列・前列のコンロッドの配置が180度反対の配置だったのを、隣り合わせにすれば共振が起きないことが分かったのは、敗戦間近だったそうです。あと、富士山をバックに飛行する黄鼻の機体、別の写真でも発掘されていないか期待しましたが、残念。ただ302空の十四試局戦改や332空の3機列線写真、粗製と言われた高座工廠製雷電の部隊配備写真などは珍しいと思いました。2005.07.15
2005年になり、文春の小林氏とならび渡辺ファンお編集者田中氏の手により、大日本絵画から「月光」本の大幅改題として「日本海軍夜間迎撃戦」が発刊となりました。素晴らしい本です。元本の月光が本土防空中心だったのに、今度の改題は「Jの七化け」の由来から、ラバウル始め南方戦線での夜戦を、日本の絶対国防圏の縮小に伴い丹念に記録していっていることで、本土防空はタネ本の中核であったにもかかわらず、結果的に全体のボリュームとしては1/4程度になっている、すなわちタネ本より書き下ろしの分が3倍くらい増補されたんじゃないか、と思わせる位の力作です。日本陸軍戦闘機隊はかなり好きなんですが、海軍の艦戦には余り興味ない私にとって、真珠湾攻撃からずっと占領地域が後退していく中での海戦や、最前線の島嶼の名前は戦史的に大変苦手なんですが、ラバウル〜フィリピン〜台湾〜本土防空と丹念に月光を中心とした海軍夜戦、すなわち彗星であり、彩雲であり零夜戦の歴史が時系列的に丹念に描写されています。また著者があとがきで編集者のことを「博識で信義の人」と最大級の賛辞を残すことのできた出版物など、大変希有な産物ではないでしょうか。(2005.03.22)

さほど熱心に旧軍の戦記物を読まない私ですが、ドイツ機ファンであることを別にすれば、ご本人の手記以外には第三者のてによる戦記の解題が少ないからでした。秋本実氏のどちらかといえば部隊史中心、碇義男氏の機体中心の著作に加えて、編集者出身の渡辺洋二氏が登場したときは、理性的に特定史観を交えず書かれたスタイルで、かなり新鮮な思いがあったものです。特に特攻の空しさ、無意味さをはっきり著した点や、日英に特徴的な、技術、戦術の身内びいきを廃した点は、フラットというよりも徹底しています。ライトシフト方面の方は受け入れ難いかも知れません。。それら初期の雑誌掲載記事は、この度、文芸春秋により、文春文庫「異端の空」として蘇りました。ムックとしては良書であった、航空ジャーナル増刊1975年「大空への挑戦」に掲出の「研3」、翌年の同誌増刊「新・大空への挑戦」所収の「震電」がそれに当たり、また私が氏の著作に触れた最初です。それから両機ともいっぺんにファンになったことは言うまでもありません。今から思えばこの2冊のムック、大変贅沢な執筆陣でした。木村、佐貫両先生の文章、手島氏のサン・テックスへのレクイエム、伊沢保穂氏の「エルベ特別隊」、そして下田信夫さんの上質なイラストなど、現在に至る私の興味の大元はこの2冊によって決定づけられたように思います。同様の執筆陣による「ヨーロッパ航空戦」というムックもありました。さらにもちろん、横森周信氏の「ドイツ戦闘機」(1980年)も忘れては行けませんね(笑)。
渡辺氏に話を戻すと、サンケイ第二次大戦ブックス、航空ファン、航空情報、丸誌などの記事も増え、また別々の出版社から出た陸海軍の「本土防空戦」写真集により、私の本土防空フェチ日本版が醸成されました。渡辺氏の執筆の特色に、関係者への徹底した取材というものがありますが、それに加え、過去の著作がいくつかの出版社を経て何回か再版されてもそのつど必ず改訂をすることがあげられます。私はそれらの著作を全て読んだ訳では無いですが、2001年に文春文庫の「重い飛行機雲」に廃刊になった朝日ソノラマ 新戦史シリーズのいくつかが改題、改訂の上再録され、まるで初めて読んだような気持ちになりました。同様の趣旨ははるとまん氏も述べていました。つまり、前に読んだタイトルと内容を忘れちゃってたのね(^_^) ひとつには、文春ではほとんどが初出時、あるいはソノラマ文庫所収時のタイトルを改題しているからです。さらに、未収録のタイトルがかなりあります。一連の302空物や本土防空戦記とちがい、こういった短編は読みやすいですから、どこかで再録を望みたいところです。
<2002年7月>
ほぼ時を同じくして、文春文庫「遙かなる俊翼」、光人社NF文庫「夜間戦闘機」発刊にともない改訂しました。黄色いセルの部分です。「遙かなる俊翼」により、雑誌掲載掌編がすくいあげられました。個人的には雑誌「丸」は立ち読みもしないので有り難いし、航空情報もおこづかい範囲外なので嬉しいです。またソノラマ文庫三部作も。今回で5編収録され、未収録はあと20編になりました。今後も文春文庫に期待したいところです。
「夜間戦闘機」は、私の愛読書でございましたサンケイ第二次大戦ブックス「ドイツ夜間戦闘機 夜空の殺し屋と電波兵器」の三度目の再版です。ロングセラーですねえ。私が、特別派手な迷彩ではない夜戦を好きになった原点は、まさにこの本との出会いですね。当時、翻訳物のただ叙事に徹したお経のような戦史がつまらなくてしょうがなかった私には、「セリフ:入り、というのはとても新鮮でアクティブな感じがしたものです。渡辺ファンになった原点でもある。今度の光人社文庫のあとがきには、その「セリフ」入りを、当時の航空関係の方の書評で「白々しいと評された」というエピソードが紹介されていました。うーん、それは、あんたの頭が固いのよ、と書きたかったところでしょうね(^_^)
<2002年12月>
今度はグリーンアロー出版の「陸軍実験戦闘機隊 知られざるエリート部隊、かく戦えり」が、文春で文庫化され「未知の剣 陸軍テストパイロットの戦場」と改題されて発刊されました。今までの文春文庫同様、編集の小林昇氏(2002年には雑誌航空ファン誌上で「プラモデルな人々」という巻頭コラムを書いておられますね)とのコンビです。渡辺ファンとしては、グリーンアローの単行本もまだ1999年の発行なので、さほど久しぶり、といった感慨は無く(もちろん言うまでもなく、鳥頭の私は、大半の内容は忘れていますが、、、笑)、正直なところ新鮮さは有りません、ただし単行本をお持ちでない方には、例え図版が小さくとも、手頃なお値段で読めることは朗報でしょう。
陸軍が購入したメッサーBf109EとKi-60の空戦写真(機体の伝習のため来日したドイツ人パイロットのうち、空軍士官でエースだったロージッヒカイト大尉は、その後帰国したが、民間人だったシュテーアが敗戦まで日本に滞在したことは覚えていませんでした)、今まで詳しく語られたことの少ないスキー実験の顛末、熊谷技術大尉が参加したアルコール燃料実験(松本零士氏の戦場マンガに、このテーマを扱ったものが有り、ずっと疑問でした)飛燕ll型を唯一使いこなした審査部の実力と、エンジン以外の機体性能の良さを少し想像できるB-29迎撃戦、混血のパイロット来栖大尉の悲惨な事故、鹵獲ムスタングの興行(独のロザリウス・サーカスのミニ版ですね)、最後に短く、高島少佐がNGの判定を下した、お粗末な欠陥自殺機Ki-115 剣の審査のエピソードまで、興味深い内容ばかりである。なお、P.190「ねらえば当たる照準機」で「ドイツもEZ42を作ったが試用にとどまった。」と有りますが、試用とはいってもMe262やFw190Dなど第一線の実用機に装備していますので、少しまぎらわしいかもしれません。
(2002年12月9日 追記)
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| 朝日ソノラマ新戦史シリーズ所収時のタイトル | 文春文庫「重い飛行機雲」改題後タイトル | 2002年7月文春文庫「遙かなる俊翼」改題後タイトル | |
| 「大空のエピソード」 | 南太平洋の零観たち |
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| ソロモン上空、日米エスコート作戦 |
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| ダバオ上空「月光」対B-24 | 「激突の果てに」 |
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| 空対空特攻「金鵄隊」 | 特攻隊、海軍にただひとつ |
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| 最後の切り札、剣部隊と「紫電改」(初出丸86年6月) |
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「最後の切り札、剣部隊」 | |
| 菅野大尉と三四三空・新撰組 | 新撰組隊長の討ち死に |
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| 陸軍速度研究機「研三」 | ※「異端の空」収録 初出上記参照 |
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| 下士官・兵は強かった |
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| 「侵略者」たちの半世紀 |
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| 北海の雷撃戦 |
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| ある巨人戦闘機の墓標 |
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| 「大空のドキュメント」 | 「鍾馗」「雷電」お皮肉な空戦 |
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| 夜戦のエキスパート六人 |
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| 木更津「彩雲」隊 |
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「偵察機は木更津を発つ」 | |
| 重い航跡 | 四十五年目の真実 |
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| さいはて邀撃戦 | さいはて邀撃戦 |
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| 敵国から凱旋 | 敵国から凱旋 |
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| ミニ戦闘機「ナット」出撃 |
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| 三〇二空の最後 | 三〇二空の最後 |
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| 「大空の戦士たち」 | 零戦隊、重慶上空で初空戦 |
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| 最強の防空部隊・三〇二空 | 最強の防空部隊・三〇二空 |
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| 特攻を拒否した夜襲部隊 | 主戦場は夜の沖縄 |
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| 局地戦闘機「震電」 | ※「異端の空」収録 初出上記参照 |
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| 北千島:吹雪と濃霧と航空戦 |
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| 常陸教導飛行師団と天誅戦隊 |
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| 日本戦闘機、身内のライバル比較 |
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| 超高空への技術戦 |
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| 「ワイルドキャット」の真価を探る |
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| 「大空の攻防戦」 | ラバウル上空の完全勝利 |
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「ラバウル上空の完全勝利」 |
| 本土上空「強風」行動記録 |
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「去りゆく水戦」 | |
| ドロナワ式対潜作戦始末 |
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| 体当たり二回-四宮中尉の航跡 | 空と海で特攻二回 |
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| 教え、戦った四式戦部隊(初出航情90年9月) |
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「教え、かつ戦った四式戦部隊」 | |
| 各国偵察機、実力くらべ |
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| 夜の「ヘルキャット」 |
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| 二つの訃報 |
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「流星」の名のごとく(単行本未収録) |
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(1970年代〜80年代前半) |
(1980年代前半〜1990年) |
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本土防空戦 | 文春文庫:死闘の本土上空 |
| 「飛燕」苦闘の三式戦闘機 | 液冷戦闘機「飛燕」 |
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| 「屠龍」重爆キラー二式複戦 | 双発戦闘機「屠龍」 |
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| 局地戦闘機「雷電」 | 局地戦闘機「雷電」 | 『局地戦闘機「雷電」』 異貌の海鷲 |
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首都防衛302空(上・下) | ※是非是非再販熱望! |
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日本の軍用機 |
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| ※多分図書出版社「彗星夜戦隊」が原著 | 「彗星」夜襲隊 |
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| ジェット戦闘機Me262 | ジェット戦闘機Me262 | 光人社NF文庫2001 |
| ドイツ夜間戦闘機 夜空の殺し屋と電波兵器 | ドイツ夜間戦闘機 | 光人社NF文庫2002年7月「夜間戦闘機」に解題 |
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ドイツ夜間防空戦(W・ヨーネンの手記の翻訳) | ※この抄訳がAJ増刊に載り、私は独夜戦ファンになりました。2001年11月光人社NF文庫再販:ドイツ夜間防空戦。 |
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超・空の要塞:B-29(訳書) |
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| 夜間戦闘機「月光」(1982) | 夜間戦闘機「月光」(1992) | 日本海軍夜間邀撃戦(2005) |
※上記は私個人の手元にある書籍のリストですから、全著作リストではありません。また雑誌掲載記事で、文庫、単行本化されたいないものも多数あると思いますが、航フは段ボール内、その他の航空誌は購入していませんので不明です。2000年末頃航フに発表した、マニアの間では有名だった疾風の流れ星キルマークのパイロットが実は別人であった話は、特に氏の取材および発表の態度を良く物語っています。
※雑誌航空ファン2001年10月号に、手島尚氏が文春「闘う零戦」の書評を書いていますが、渡辺洋二氏の著作スタイル等を的確にまた簡潔に書いていますので、お持ちの方はご一読をおすすめします。
※誤記、追加情報がございましたらご一方ください。掲示板はこちら。メールはこちら。
2001.11.8改訂
2002.7.15改訂
2002.12.9改訂
2005.03.22改訂
2005.07.15改訂