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小室克介氏の著作あれこれ

〜ロジカル・シンキング・アバウト・Luft’46〜

 小室克介氏といっても、年季のいったルフトヴァッフェ・ファンでないとピンと来ないかもしれませんが、1980年代半ば、雑誌「エアワールド」増刊「J&P(ジェット&プロペラ)」の「全オリジナル資料による ドイツ機拾遺集」連載から20年近く経過した2004年にになって、雑誌「航空ファン」にふたたび連載をなさるようになり、多くの方の目にその記事が触れるようになったことになったと思います。
 ドイツ機ファンにとって「J&P」誌におけるルフトヴァッフェの各種試作機に関する、深くかつ新鮮な論考は、それはそれは衝撃的なものでした。国江隆夫氏や阿部孝一郎氏を別とすれば、それ以前の日本人研究者のドイツ機考証の多くが、既に海外で出版された書物の孫引きが多かったのに較べ、小室氏の記事はおそらく一次資料をも下敷きにしていると想像され、その真摯さにおいて群を抜いてと思います。またそのテーマが、名だたる海外研究家の書物でも詳細が謎とされていた試作機・研究機であったり、また存在すらクローズアップされて来なかったメインストリームでは無い機体だったりしたため、より一層印象に残ることになりました。
 氏の記事が印象的な理由はもうひとつあって、それは味わい深い筆致のイラストレーションです。多くのライター諸氏も線図やトレスコ(死語ですが)による鉛筆スケッチをものにされますが、あくまでそれは本文の補足説明素材という位置づけなのに対し、小室氏のイラストは単品として切り離してもイラスト作品として成り立ちそうなレベルなのです。これにより、実機が完成すらしなかった機体が、記事中でありありと再現され、一次資料の単なるスケッチや簡単な線図では想像しにくい3Dの姿がはじめて理解できるようになるのです。
 私は小室氏とは直接の面識は全く無いのですが、氏はかつてホンダの二輪・四輪のエンジニアであり、現在はリタイアされ航空ジャーナリスト協会(JAJA)理事としてご活躍とのことです。なお、ワタクシにとっては畏れ多くも大学の同じ学部学科の大先輩でも有られました。


<最近の航フ記事の感想文>

<第1回>「最期の夜間戦闘機ハインケルP.1079」
 P.1079は、ジェット夜戦のプロイェクトです。戦闘機をやりたくてたまらない頑固オヤジのエルンスト・ハインケルですが、必ずしもメッサーシュミットがナチ党にパイプが深く、親ナチでないハインケルが冷や飯を食わされたため戦闘機が正式採用されなかったとする従来の定説について、RLMとしては戦闘機といった防御兵器でなく、攻撃兵器であるHe111やHe177といった爆撃機に注力してもらいたかった意向のほうが先に立ったのでは無いか、と推論されているのが新鮮な視点。固有技術とその設計の背景となった理由・歴史・政治が相まって、単眼視点でない記事のため楽しく読むことが出来ました。
 ところでP1079の無尾翼型は記事でも触れているように、P1078のそれととっても似ていますね。ガル翼が何ともセクシーでかっこいいです。P1078B型無尾翼タイプもキット出ないですかね。往年のモデルアート誌スクラッチ作例とならび、J&Pの氏の記事は未だに私の心の中で燃え続けています。

<第2回>「Ta183・大いなる源流、ドイツ第2世代の主力ジェット戦闘機」
 後にまんま設計をパクったソ連のミグ15に較べても、寸詰まりでいささかこっけいな程不格好ともいえるタンク183のプロポーションですが、実は天才ムルトップが風洞実験で煮詰めに煮詰めた末の設計に、さらに工作容易化のため平行直線部を増やし、ギリギリの空力ロスの出ない線を見切った末に現れたカタチだという話に感動。タンク教授の匂いが残るのはキャノピー位で、逆にムルトップの研究成果の表出である、後の英国産EEPIライトニングにこそ、タンク183の面影が偲ばれる。あんな敗戦近い時代に、よくぞここまで真剣に仕事したもんですね。

<第3回>プロペラ機で800H/hを越えろ-フォッケウルフの高速プロペラ機計画
 J&P誌1986年記事が装いも新たに再現されました。ドルニエが335でプッシュ・プルタイプのエンジン配置・延長軸が可能になったのはワール以来の飛行艇主翼上部装備エンジンの伝統上の技術進化であるとか、ジェット化に危惧するRLM保守派?にとって爆撃機としても戦闘機としてもレシプロ機として希望の星だったからこそ、Do335に過大な機体と要求が降りかかり、あれもこれもで実戦化が遅れてしまったくだりなど、おもわずポンと膝を打ちました。さらにフォッケウルフのプッシュ式プロペラ機のエンジンに予定されたアルグスAs413という聞き慣れないエンジンは、実はフランスのアルゼナール24Hの双子化だたっとか、新たに勉強になりました。

<第4回>「ハインケルP.1076ーハインケルの技術者魂と反骨」
 ああ、ついに1973年の世傑記事以来30年を経て小室氏のハインケルP.1076についての解題が再び日本語で読めるようになりました。ルフトヴァッフェ・ファンとして感涙の一言に尽きます。P.1076は、ダイムラー・ベンツDB603LM(2100hp)またはDB603N(300hp)を搭載予定した単発単座二重反転プロペラ、前進翼装備、表面蒸気冷却という、一種究極のレシプロ戦闘機です。エンジンをスラストラインから右へ4センチオフセットし、さらに約9度傾けて搭載したため、カウリングが左右非対称という、いささかフリークがかったモンスターマシンです。設計はへールトとホーバッハ。往時のJ&P記事では「He112、He100と、2機つづけてメッサーシュミットに破れた無念さを、三度目の正直で、この機体で一花咲かせたかったのではないだろうか。」、「あまりにも耽美的といえるほど完成されており、」「まさにハインケル魂の権化のような機体だった。」とかなりヒロイックなトーンもあり、当時中学生の私はすぐさま酔いしれてしまったものでした。2004年の航フ記事ではもうすこし抑えた筆致となってクールに当時の状況下での、この機体のポジションを浮かび上がらせています。また俯瞰イラストが加わり、主脚取り付け一の異様なほどの前進状態がビジュアルに分かり、改めて三面図では読み切れない姿を知ることが出来ました。またDB603N搭載の場合の機体寸法の拡大具合や、He100当時よりも実はもっと進んでいた表面蒸気冷却システムについても、今回の記事で知見を新たにすることができました。ジェットでないLuft'6もののせいか、レジンや簡易インジェクションでもこの機体のキットは無いようなので、記事の最後にあるように、リノのレーサー機仕様なんてアプローチからでも、どこかキット化してほしいものです。あ、それより小室氏の航フ連載が続いてくれることも祈らねば。国江さん記事連載と並んでドイツ機記事が載っていれば航フの千円強も高くは無いです(^o^)


<小室克介氏 記事・著作>

エアワールド増刊「J&P」記事

タイトル
書名・版元

発行年月
全オリジナル資料による ドイツ機拾遺集 (1)
●フォッケウルフ・ドリュックシュラウバー(推進式プロペラ機)の系譜
●ホッホ・ライスツングス・イェーガー・ミット.・1×Jumo222C/D
J&P No1
(株)エアワールド
1986年2月
全オリジナル資料よる ドイツ機拾遺集 (2)
●メッサーシュミットBf109T
●メッサーシュミットBf109H
●フォッケウルフTa152H
J&P No.2
(株)エアワールド

1986年8月
全オリナル資料による ドイツ機拾遺集 (3)
●ハインケルP1078A通常型 B無尾翼型 最終案

J&P No.3
(株)エアワールド

1987年8月
「世界の傑作機」記事

タイトル

書名・版元

発行年月
世界の傑作機(旧版青表紙時代)「メッサーシミットBf110」所収
●ハインケルP.1076
(飛龍会会報「飛龍」第2号より転載) 文林堂 1973年6月
文林堂 -
航空ファン記事

1973年6月
※そのほか、Ju87、紫電改他で記事を執筆されているようですが、あいにく私は所蔵していため詳細不明です。
文林堂 -

各種書籍

タイトル

書名・版元

発行年月
オスプレイ 第二次大戦のメッサ−シュミットBf110エ−ス

大日本絵画 翻訳
-
世界の戦闘機・爆撃機 学研の大図鑑 監修

学研
-
日本航空機総集(野沢正編著)編集委員

出版共同社
-

最新 航空ファン記事

タイトル

書名・版元

発行年月

オリジナル資料によるドイツ秘密計画機解剖第1回

●最期の夜間戦闘機、ハインケルP.1079

航空ファン

2004年1月
オリジナル資料によるドイツ秘密計画機解剖 第2回

●Ta183・大いなる源流、ドイツ第2世代の主力ジェット戦闘機

航空ファン

2004年2月
オリジナル資料による ドイツ秘密計画機解剖 第3回
●プロペラ機で800H/hを越えろ-フォッケウルフの高速プロペラ機計画

航空ファン

2004年3月
オリジナル資料による ドイツ秘密計画機解剖第4回

●ハインケルP.1076ーハインケルの技術者魂と反骨

航空ファン

2004年4月
オリジナル資料による ドイツ秘密計画機解剖 第5回

●Fw191(前編)バトンを受けそこなった第三走者 ボンバー・べー・プログラムの挫折

航空ファン

2004年5月
オリジナル資料による ドイツ秘密計画機解剖 第6回

●Fw191(後編)バトンを受けそこなった第三走者 ボンバー・べー・プログラムの挫折

航空ファン

2004年6月
オリジナル資料による ドイツ秘密計画機解剖 第7回

●メッサーシュミットMe309-バトンを受けそこなった第三走者・戦闘機編

航空ファン

2004年7月
オリジナル資料による ドイツ秘密計画機解剖 第8回

●ハインケルP.1080-ハインケル最期のプロジェクト

航空ファン

2004年8月
オリジナル資料による ドイツ秘密計画機解剖 第9回
●ドイツ機に関するあれこれ 国籍マーク他

航空ファン

2004年9月
オリジナル資料による ドイツ秘密計画機解剖 第10回
●ドイツ機に関するあれこれ(続)Fw社のプロジェクト名称

航空ファン

2004年10月
オリジナル資料による ドイツ秘密計画機解剖 第11回
●大河の源流 フォッケウルフHeS 109-011

航空ファン

2004年11月
オリジナル資料による ドイツ秘密計画機解剖 最終回
●ドイツ・戦後に残された文献資料 ハインケルP1078他

航空ファン
2004年12月

※上記は私個人の手元にある書籍および大日本絵画オスプレイ・シリーズBf110の奥付を参考にしたリストですから、全著作リストではありません。誤記、追加情報がございましたらご一方ください。

2004.03.06記 2006.03.20追補